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ナナオの液晶テレビ

 年齢とともに物欲は薄まってくる。人それぞれではあるが最近はそういう感じがする。それでも時折良いものを見つけることもある。今回はナナオの液晶テレビ

 古いトリニトロンテレビが壊れたら次は薄型、と思いつつ何年も経った。要するにテレビが壊れない。そんな折の夏前のある日「ナナオ」の液晶テレビのチラシが新聞に入っていた。パソコン用、とくにデザイン分野ではナナオといえばかなりロイヤルティが高いが、一般向けの液晶テレビも作っているとは知らなかった。
 数日後、帝国劇場わきにあるショールームを訪ねる。そこで、ひさびさに物欲を刺激されるモデルに遭遇した。ナナオFORIS.TV VT23XD1という品番のテレビ、画面サイズは23インチと小さめだが、画質がめっぽう良い。(このテレビ、ハードのデザインは川崎和男氏)

 まず、よく画面の下の方に出る流れるテロップ文字がまったく滲まない。これはOCB液晶というものを使っているからできることらしい。しかしこの技術はかなり高度なものとか、結果OCB液晶は高いものにつくらしい。
 つぎに、黒の再現性の豊かさ。液晶テレビを買わない理由のひとつが、きついコントラスト、鮮やかくっきりといった、なんとも薄っぺらなその色合いである。あの画面を見ると、良くできたプラスチック製の食品サンプルを思い出してしまう。まったく、こんな色づくりをしているから日本人の色感がどんどん悪くなる!と思っている。だから、もし液晶テレビを買うなら、できるだけ柔らかくおとなしい色調で、しかも安いものと決めていた。

 VT23XD1の色調、それも黒の再現は見事です。暗部の微妙なトーンの違いが良く分かる。だから画面の奥行き感が違ってくる。デモで「暗いトンネルの中を走るクルマからの映像」を見た。他の機種では暗い天井部分は文字通り真っ黒。それがVT23XD1で見ると、真っ黒なはずの天井のディテールがほんのり分かる。
 担当者に、これならヴィスコンティの映画、たとえばルートヴィッヒなんかも見る気になるね、と話したら、そういうお客さまにこそお買いあげいただきたい、そういうつもりで開発したものです、と。
 正直なところ、このテレビの画質には参った、良いものは探せばあるものだ、と感心もした。

 ただしこのVT23XD1、すでに生産打ち切りだそうである。さらには「OCB液晶」も「美しい黒」も、現行モデルでは採用無し、と。在庫は少々あるので今なら間に合うかもしれないとのこと。
 でも、いまだにトリニトロンは壊れない。その気配もない。悩むところである。
 悩むといえばもうひとつ、このテレビは価格が高い。23インチで228,900円。しかもダイレクト販売で値引きは無し。今朝の新聞でも、薄型テレビは、すでに1インチ5,000円ラインの攻防とか。

 とりとめもないが、ちょっと気になる物欲刺激話しでした。

*ナナオの他のモデルの色調もかなり良い方と思う。ただ、少し地味に見えるかもしれない。店頭で他メーカーの「くっきり高画質」ものと並べられたら、その抑えめの色調はやや見劣りすると思う。