台形の箱・パッケージの話 -1

 とある和菓子のパッケージ。デザインにとりかかった最初から「台形の箱」がごく自然にイメージとして湧いた。でも、この台形の箱は製造上はちょっと厄介だ。

 一般に流通するパッケージの大半は「組み箱」である。この組み箱、使わないときはパタンとたためるから、運送上も保管上も、省スペースで済む。

 無理なくたたむには、直方体(あるいは立方体)が前提となる。要するに相対する二辺が同じ長さなら、たたんでもどこにも無理がかからない。無理がないということは、たとえばお菓子の工場で、たとえば店頭で、簡単に組み立てられるということになる。

 今回思いついてしまった「台形の組み箱」、注意してみれば、ときおり見かけるから出来ないわけではない。台形の上辺と下辺の長さの差を無視して、強引に平べったくすれば畳める。
 要は、台形の箱の四隅に出来る4本の稜線以外にもう一本の折り線を付ければ済む。これは畳むためだけの線だが、とにかくこれがないとスンナリとは畳めない。

 この折り線は長辺のあるところにできる。台形の箱の場合、だいたいは長辺を底にするから、組み上がれば、その折り線は見えない。

 今回デザインした「台形の箱」は長辺53mmに対して短辺が48mm、その差は5mm。結果、長辺の端から5mmのところに折り線ができる。(図のB)
 これはやや微妙な数字である。組み立てるときに、素直な直方体のようにスイスイとはいかない。試作段階では注意深く組み立てるから、どうということもないが、パッパとこなしていく作業では、この差が大きいほど楽なのはいうまでもない。

 この強引にたたんだ箱を台形にするには、たたむためにできた折り線を無視して、本来の折り線(図のA)をきちっと折らなければならない。これはちょっとしたコツと力がいる。

 これは紙質や厚さ、硬さといった条件にも左右されるが、とにかく箱の製造にはそれなりの経験が求められる。たとえば、折り目につける筋の深さなど、たとえば、ある程度の力が加わっても剥がれない接着面の強さ、、。ようするにそういった諸々について、経験の豊かな箱屋さんでないとできない。この問題がクリアできなければ、このデザインはお蔵入り。絵に描いた餅で終わってしまう。

 幸いにも、今回は経験豊かな会社が、このちょっと厄介な仕事を引き受けてくれて、なんとか実現の目途が付いた。

 今回の仕事でもつくづく思うのが、印刷や組み箱製造といった、近いけれど異なる業種、それを的確につなぐことのできるコーディネーターの存在である。
 デザイナーの我が儘(とは、あまり思ってないけれど)と、印刷会社の技量や日程の調整、そしてキチッと仕上げられる組み箱製造会社の選定。もちろん大元のクライアントの納品日の厳守。仕事といってしまえば、それまでだけど、このあたりが上手く運ぶかどうかによって、
商品としての完成度は大きく変わる。今回のように上手くいったときは早く店頭に並ぶのを見たい。

 でも、まだ完全に出来上がったわけではない。この先、どんなアクシデントが起きるかわからない。いま手元にあるのは、実際の機械にかけて作った試作品。
 来月には金沢でこの箱の印刷がある。最終的な色のチェックをするために、立会に行くことになっているが、はやく完成品を見たいものである。

*写真は、まだ発売前の商品なので表面デザインは消してある。

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